おまじない
最初は、なんだか体がだるいなって思っていたんだ。
でもその頃は長引いていた魔物の討伐の依頼にようやく目途が立った所だったし、その安心感もあってか疲れが出たんだろうって気にしなかった。
実際それ以上体に不調が出ることもなかったし、気にするほどでもなかったからそのまま。次に変化があったのは、魔物の討伐が無事に終わった事を伝えに行った後からかな。まぁまだ事後処理も残っていたし、やることは残っていたけど依頼者に報告はしなくちゃいけないし。その日から、いや次の日からかな?妙に体が重くて、疲労がどっと出てきたような重だるさがあった。でもまぁ、これもやっぱりただの疲れからだろうと思って気にしなかった。そういうことが全くなかったわけじゃないし、ご飯を食べれば楽になったし!特にのご飯を食べたら体のだるさもふっと軽くなって楽になったから、そこまで重大なことだなんて欠片とも思ってなかったんだよ。・・・どうしたのいきなり頭なんて抱えて。うん?まさかの効果?予想外?え?何が??・・・気にしなくていいの?ふぅん・・・?まぁに限らず、僕の艇の皆が作るご飯は全部美味しいから、食べたら元気になるってのはいつものことだよ。え?カタリナ?・・・・ま、まぁ例外はあるよ、何事も。
えーっと、それで、そう。後始末も終えて、島を出るって依頼人に伝えて、その夜からかな。急に体が動かせなくなった。体全体に力が入らないっていうか、自分の体があんなにも重いだなんて思わなかった。瞼を持ち上げるのも辛いぐらいで、いきなりそんな状態になるものだからわけがわからないよね。とはいっても、その時は思考もちょっと朦朧としていたから、朝食の時間になっても起きてこない僕を心配して見に来たルリアの慌てたような声をぼんやり聞いてたぐらいでなんで起きれないのかなぁって思ってたんだけど。呑気すぎるって、でも考えても見てよ。今までそんなことなかったのにいきなりその状態だよ?もうちょっと段階があるならともかく、いきなりレベル1からレベル10ぐらいにステップアップしたら状況が呑み込めないのもしょうがないじゃないか。
あの程度の体のだるさなんてザラにあるし、そこまで長期間続いていたわけじゃないんだから、僕が悪いわけじゃないと思う。
まぁそれで、周りがすごく慌ただしくなってシャオやカリオストロや皆が集まっててんやわんやの大騒ぎだよ。でもこの辺はの方が詳しいんじゃないの?ぶっちゃけ僕寝てただけだし。そうだよね、も駆り出されて原因究明に動いてたんだから、その時のことはの方が詳しいよね。・・・心配かけてごめんな。大変だっただろ?カタリナやラカムもオイゲン達もいるし、指揮系統は大丈夫だとは思うんだけど。あ、でも今回はマギサやカリオストロがメインで動いてくれたんだっけ?
僕はその時もう指一本動かせなくて、後から知ったけどルリアも僕ほどじゃなくても似たような状況になってて阿鼻叫喚だったんだって聞いて・・ねぇまだルリアに会いにいっちゃダメなのかな?うぅ・・もうこうして起き上がれるんだから平気だと思うんだけど・・・。
わかった、わかったよ。本調子になるまで大人しくしてるって!そんなに信用ないかな?!お兄ちゃんのこともっと信用してくれてもよくないか?日頃の行いが大事って・・・ぐぅの音も出ない・・・!ごほん。
でもマギサ達から原因聞いて驚いたよ。まさか依頼人の娘さんがそんなことしていたなんて。うーん、そりゃ、嫌われてはいなかったとは思うけど、まさかそこまで好かれてるとも思わなかったし。だって彼女とは少ししか会話もしてなかったし、顔だってそんなに合わせてなかったんだ。わかるだろ?僕も皆も依頼の方に集中してたから、ぶっちゃけそこまで彼女のこと気にしてなかったし。
そもそもランスロットとかカトルとか、あの辺りなら一目惚れとかわかるよ?腹立つぐらい顔がいいからね、皆!でも僕だよ?この平々凡々な顔立ちの僕に!まさかそんな好意を向けられるなんて思わないって!・・・え、なに。なんでそんな半笑いなの。人間顔じゃないって?慰めてくれなくていいよ、わかってることなんだし。どう足掻いたってあの顔面偏差値には勝てないから、今更どうとも思ってないから。・・・ねぇ、だからその半笑いなんなのさ。
とりあえず、もう呪いの元は断ったから平気だってマギサは言ってたし、一安心だよ。・・・それにしても怖いな。まさか、ただのおまじないが呪いになるなんて。本人にそんなつもりは一切なかったっていうのも、正直ちょっと怖いよね。望むと望まざると、使い方次第で恐ろしいものになるんだって・・・マギサもカリオストロも笑ってたけどさぁ、笑いごとじゃないよね。
なんだっけ、好きな人と近づくおまじない、だっけ。ああいうのってさ、眉唾ものっていうか、お遊びみたいなもので効力なんてないものなんだって思ってたよ、僕。
今回は偶々?本物に当たっただけで、大半は効力なんてないものがほとんどだっていうけど・・・でも、広がってるものの中には、本物も混ざってるかもしれない。
それを見極める目なんて持ってないから注意しろって言われても大半が無理なんだろうけど、でも、そうだな。迂闊に手を出していいものじゃないなって思ったよ。
マギサも、本物であっても正しい使い方を知らなければ正しいものも途端に危険なものになるって言ってた。でもそれはおまじないだとか、そういう魔術的なことだけじゃなくて、普段からも言えることだよね。剣だって、使い方を誤ればそれはただの凶器だ。
うん。今回のこと、他人事だとは思えないな。僕ももっと気を引き締めなきゃ。
・・・ふわぁ。・・・ごめん、。なんか眠くなってきた・・・。話しすぎたかな?まだ本調子じゃないもんね・・・うん。ちょっと眠るよ。次、起きたら・・・ルリアの所に、行きたいな・・・・・。
ジョキン。
「しつこい人間は嫌われるって、どうして考えられないもんかね」