適応力こそ力です



「いいことを教えて差し上げましょう、黄尚書。―――人間、どんなことでも大概のことは適応して生きていけるんですよ」

 例え世紀の美貌であろうとそれがどれだけとんでもない美しさであろうと、人間が失神したりトチ狂ったりなんなりしようとも、いつか「慣れ」というものは訪れるのである。
 人間は順応性に優れた生き物なのだから、何度もみてりゃあ嫌でも慣れる。まあ、いつ慣れるかとかそういうのはその人の性質によるから一概には言えないが、少なくも同じ物をずっと見続ければ大抵慣れるだろう。
 つまり、飽きるのである。飽きてしまえば世紀の美貌だろうがなんだろうがその辺の人形と大差ない。ただ時折綺麗だと思い返して目福だな、と思えばいいだけの話しで。
 まあただ一回の衝撃が凄まじ過ぎて、慣れさせるまでが大変なのだろう。仕事が回らないから。それは大変だから、結局即実性のある方法を取らざるをえないわけで。あぁ本当、美人すぎるのも問題である。
 つらつらとそんなことを考えながらふ、と一つ微笑を残してさっさと室内から出ていく。とりあえず庇った時に強かに打ちつけた腕を治療してもらわないとなぁ、と思いつつ、私は地獄絵図の仕事場を抜け出したのであった。