08: この想いを伝える言葉が見つかりません
声にもならない悲鳴が、喉の奥で潰れて途絶えた。
※
頭から被った布ごと、三つの腕が絡め取るように抱きしめてくる。
「、。行かないで」
背中から抱きしめてくる次兄の声が聞こえる。
ぎゅっと抱きしめる腕に力がこもり、まるで引きとめるかのように。
「私達を置いていくな、」
横から抱きしめる三兄の声が聞こえる。
髪に唇が寄せられ、懇願するように押しつけられる。
「戻っておいで、。私達の愛しい子」
正面から抱きしめる長兄の、泣きそうな声に唇が戦慄いた。
頬を辿る指が震え、包み込む瞬間の暖かさが悲しい。
「お前を傷つける全てのものから守るから」
「二度とお前を傷つけなどさせないから」
「だから戻っておいで、帰っておいで。私達の」
降り注ぐ言葉に喘ぐように唇を震わせる。一口も水を含んでいない口内は乾ききり、舌が張りつく喉は枯れた。零れない声に労わるように長兄の睫毛が震える。
丹精な顔が切実さを秘めて呼びかける。戻って来いとどこにもいくなと行かないでと。
声さえもなく抱きしめる腕が全てを伝えてくる。堪らなくなって固く握り締めていた手を解き縋り付くように正面の長兄にしがみついた。一層抱きしめる腕が強くなる。
これ以上水分なんて出していられないのに、ほろりと涙が目尻から零れた。
「「「愛しい、どうか私達の元に帰っておいで」」」
暖かさに伝える言葉が、喉の奥に引っかかって出てこない。