女神様のお気に召すままっ
結論を出すとすればスケートをしなければいい話だよね、と元も子もねぇな!!という結論に行き当たるのに、さほどの時間は要さなかった。
当然だ。赤ん坊になった私の時間は腐るほどにある。なにせ寝るか食べるか泣くかぐらいの動作しかする必要がないというかできないので、考える時間だけは本当にたくさんあったのだ。
現実が受け止められないよ?そんなこと言ってもしょうがないって経験則から知ってるので、早々に諦めた私は多分もう終わってる。
さて、話は戻して今後の私の方針ではあるが、とりあえず私の第一の人生目標は「ヴィクトル・ニキフォロフ」を死なせないこと、である。これは勝生勇利との約束というか願いなので、それを受けてこうなってしまった今その大望を果たさずに今生で死ぬことは許されまい。
本来ならば許されないことである。過去を変えるなどあってはならないことだ。かつてはそんな禁忌を犯させないための役職についていたこともあったので、この行動は彼らに対する裏切り行為なのかもしれない。だが、あえて言おう。神様がオッケー出してるんならいいんじゃね?と。
そも、ダメならダメで恐らく何をどうしようと結末は変わらないだろう。そして、恐らく変えさえない為の「抑止力」がなんらかの形で働くはずだ。あらゆる邪魔と障害が起こりうることは想定してしかるべきである。それがもしかして「刀剣男士」なのかもしれないし時空パトロール的なものかもしれないし異世界からの何かかもしれない。それは全くの未知の現象であるが、その覚悟もなしに望む全てを手に入れることは、きっと叶わない。
なのでどうしようもないときは諦めてくれ、というしかない。助けるとはいったものの、所詮人間なのでできることには限界があるんだよ。言い訳だけれど、最早白龍の神子ではない私では神様バックアップはそこまで期待できないので、運命を捻じ曲げる行為がどこまで許容されるか皆目見当もつかないのだ。やれるだけのことはやるけどねー。
まぁなのでその前提として「スケートをしない」という結論が導き出されるわけだ。
だって勝生勇利とヴィクトル・ニキフォロフの繋がりの大前提は「スケート」である。切欠はそれでそれがなければ2人の人生が交わることは・・まぁ、よっぽどがなければ多分ないだろう。
スケートありきで出会ったのだから、出会った過程でスケートがなくても繋がった関係性は育まれることはない。
まぁスケートをしていても「びーまいこーち!」騒動がなければ大丈夫な気もするが・・要するに世界から「皇帝」を奪うような事態にならなければいいんだよね?
彼が死んだのは、勇利が世界から皇帝を奪ったと同時に皇帝が皇帝ではなくなってしまったということが起因している。まぁいくら皇帝だのリビングレジェンドだの言われていようと人間なのでいつかは負けるし玉座ってのは大概代替わりするものだし寄る年波には勝てないし、彼は満足してたんだからいいじゃないかと思うのだが、そう思えない人間が一定数いることは否定できない。とりあえず魔女によって堕落した皇帝という図式を成り立たせずにおけば、大体の死亡フラグは折れるはず、と読む。となれば勝生勇利には申し訳ないが、スケートは諦めてもらうしかない。まぁ、私としては競技者だとか到底向いてないし、体は勝生勇利でも中身がこれなのでああなれる気が全くしない、というのもあるが。うん。しょうがないよ中身凡人なので。
となると将来は実家を継ごうかな。あ、でも真利姉ちゃんが継ぐんだっけ?あーじゃぁ板前とかいいよね。料理は嫌いじゃないし、それなりにできる自負もあるので、専門的に学ぶのもいいかもしれない。それとも経営とか学んだ方がいいかな。あぁ、やれることは色々あるなぁ。幸いにしても決してファンタジー枠の世界ではないので、個人的にはいくらか気楽な気持ちで将来に夢を馳せた。
ねぇ、知っているかい勝生勇利。
君の世界はスケートだっただろうけれど、本当にそんなものなくても色んな世界があったこと。
君は確かにヴィクトルに出会って愛を知ったけれど、でも君の愛はいつも一人にだけ注がれていたね。それが悪いことだとは思わないし、それはそれで幸せだとも思う。事実君は幸せだったけれど、同時にね、こうも思うんだ。
もっと周りに愛を振りまけば、こんな間違ったこと、しなくてすんだんじゃないのかなって。
愛を知った癖に、自分のスケートは周囲の支えがあることを自覚したはずなのに。それでも一番大事なものを一つにだけ向けすぎちゃうから、こんな突拍子もないことしちゃうんだよ。
だから私は、ひっそりこっそり第二の人生目標を立ててみる。
第二の人生目標は「勝生勇利」よ世界を知れ、だ。
それで自己嫌悪に陥ろうが罪悪感に駆られようが後悔の坩堝に落ちようが、知ったこっちゃないけどね。