地球人的野菜生活。



 今まで感じたことがないぐらいに大きな「氣」を感じた。身近で知っている、お父さんのそれよりも大きな、それでいてひどく歪んだ氣の形。
 お父さんが、悪い奴の氣は淀んでいるといっていたけれど、なるほど。こういうことなのかと今更ながらに理解を示しながら、私はきつく悟飯を抱きしめて唇を戦慄かせた。そんな私の様子に、怪訝な視線が向けられる中、一拍遅れてお父さんが何かを感知したかのように・・・恐らくは今私が感じた「氣」を察して、すごい勢いで上を見上げた。一瞬にして、お父さんの全身に戦慄と緊張が走り、空気が強張ったのを感じる。

「すげえパワーを感じる・・・!なんだってんだ・・!?」

 引き攣った父の声を頭上で聞きながら、悟飯にしがみついていると、不意に背中に手が回されて、ぎゅっと抱きしめられた。その小さな手の感触に俯いていた顔をあげれば、悟飯が不安そうに眉を下げて瞳を揺らしながら私を見つめていた。黒々とした瞳に、蒼褪めた顔をしている自分が映りこんでいるのが見えて、はっと息を呑んでぎこちなく口角を引き上げる。

・・・だいじょうぶ?」
「・・・大丈夫だよ、悟飯。大丈夫・・・」

 心配です、という様子を隠しもしないで、顔に、声に、瞳に、仕草に。全てに気持ちを乗せて、そっと触れてきた小さな手に頬を摺り寄せて深く息を吐き出した。どくりどくりと脈打つ心臓が、嫌な速度を刻むのを自覚しながら、悟飯を不安がらせてはいけない、と物凄いスピードで迫りくるそれに抗うように、私は悟飯の腕をぎゅっと握りしめて、空を見上げ続ける父を見た。
 ただでさえ、いつも頼れる父親がただならぬ様子で緊張しているのだ。子供の悟飯がそれを察せられないはずもなく、その中で更に私まで顔面蒼白になっていては、悟飯の不安が薄れるはずもない。平常心を保たねばならない。あぁ、それにしても、これ、どういう話だったっけ。頭をフル稼働させて古い記憶を呼び起こすけれど突然といえば突然の事態にうまく頭が働いてくれない。ただでさえここ数年は至って平和な日々を過ごしていただけに、ドラゴンボールって元はと言えば超・危険漫画だったと今更ながらに思い返す有様である。そういえば致死率半端ない漫画でしたねこれ。主人公も情け容赦なく死んでましたねうわぁ嫌な世界。
 大体メインどころの話ぐらいっきゃはっきりとは覚えていないだけに、この辺りどういう展開だったかなぁ、というのが多々あるわけで、軽いパニックを起こしかけているおかげで記憶の洗い出しもうまくいかない。
 どうだったかなぁ、と冷静半分、不安半分で空を見上げれば、不意に黒い点のようなものが見えてきた。この辺の視力の良さはパオズ山育ちのおかげだろうか。しかし私に見えたのなら父にも見ているわけで、むしろ私よりもより注意深く探っていたのだろう彼は、私があ、と声をあげる前に酷く堅い声で唸った。

「きたっ!!」
「え?」

 クリリンさんが、ちょっとばかり間の抜けた声をあげて空を見上げると同時に、黒い小さな点だったそれは見る見るうちに人の形を取り、数分もしないうちにカメハウスの頭上までくると、軽い着地音をたてて砂浜に降り立った。
 動きに合わせて、膝裏まで好き放題に伸びた髪がふわりと揺れた。ふわりと、というかもさっと、という方が正しいかもしれないが。
 周りがポカンと呆けている中、お父さんだけが警戒も露わに体中に緊張を走らせて、突如として空から現れた男に注目している。悟飯も、ただならぬ気配を察知したのであろうか。私がしがみついていたはずなのに、いつの間にか悟飯の方が強く私にしがみつくような体勢になっていた。ピン、と立った尻尾の毛が逆立って、悟飯の緊張を伝えてくる。そんな悟飯を庇うために、後ろに回すように体の位置をずらしながら誘導して、私は父の背後で足元の影に隠れるようにしながら、この淀んだ氣の持ち主を見た。
 ・・・・・・・・・・・・こういってはなんだけど、男のブルマ姿はあんまりみたくないなぁ・・・。剥き出しになった両足の、眩しいぐらいに筋骨隆々な様がなんともいえない。無論、腕はノースリーブなのか、肩部分は大きく突き出た鎧の肩当のようなものが見えるが、その下にはアームプレートも衣服もなく、逞しい二の腕が惜しげもなく晒されている。お父さんも結構な筋肉の持ち主だが、勝るとも劣らない筋肉っぷりだ。髪の毛の量も凄まじく、なのに額のM字がなんだか将来を不安にさせる。大概失礼な感想だが、初見でみる限り確実に「へ、変態だー!」と叫ばずをえない恰好なのは間違いなかった。・・・名前なんだったっけな、この人。サイヤ人でお父さん・・・孫悟空の兄だったってことは覚えてるんだけど。眉間にくっと皺を寄せたところで、とりあえず不審者・・・現状本当にただの不審者でしかない男は、警戒している私たちを見回して、お父さんに視線を止めるとニヤリ、と悪人極まりない笑みを浮かべた。

「成長したな、カカロットよ。だが一目でわかったぞ。父親にそっくりだ・・・」
「へ!?」
「な、なんだよこいつ・・・なにいってんだ?」

 そういえばお父さんのお父さん・・・うん?考えれば今の私にとってはおじいちゃんか?まぁ、とりあえずお父さんのお父さんは確かに瓜二つといってもいいぐらいに似ていたような気がする。ていうかそっくりのレベルを超えて、むしろ私と悟飯を差し置いて双子じゃね?というぐらい似てたよね。なんだっけ、サイヤ人の下級戦士は顔の種類が少ないとかどうとか・・・そういう問題なのか?
 突然話し始めた・・・しかも若干の親しみをこめた様子の不審者に、さすがにお父さんもクリリンさんも戸惑いが隠せずに怪訝に眉間に皺を寄せていた。そんな中で、一人記憶と照らし合わせて首を捻る。はて、この人・・・やっぱり名前が出てこないけど、確かこの人が切欠で色々大変なことになっていったような・・・。そうそう!確かサイヤ人の王子様(笑)が登場する切欠に・・・うん?あれ?それって、確か・・・。ようやく思い出し始めた物語の内容に没頭しかけたところで、親しみを込めて多少和んでいた男の目が(いやそれでも十分に凶悪な目つきだったんだけど)、次の瞬間にはギッと凄みを増すようにきつく細まった。

「だが、この星の有様はなんだカカロット。貴様の使命はこの星の生物を死滅させることだったはずだ。一体今まで何をしていた!」

 叱り飛ばすような口調に、無論そんな物騒な使命になど身に覚えのないお父さんはポカンとしているし、クリリンさんやブルマさん達に至っては「なにこの人危ない人?」とばかりの視線を向けている。いやまぁ、正しく物凄い危ない人なんですけどね。事情を薄らぼんやりとではあるが知っている分、このなんともいえない空気に居た堪れない気持ちで、お父さんの道着を掴んだ。ぎゅっと握れば、ちらりとお父さんが一瞬こっちをみて、庇うようにそっと手を翳して私と悟飯を更にお父さんの影に入るように促してくる。決して安心できる状況ではない。父の警戒は薄れないし、何より私自身感じる氣の大きさは、明らかに父よりも目の前の男の方が上だ。物騒な、といってもいいその氣の強大さは、十分に私の不安を煽っている。何より、思い出してきた記憶で、お父さんは・・・。相手に悟られない程度の微細なやり取りの中、背後ではぁ、と大きな溜息を吐くのが聞こえた。そして、戸惑っている私たちの横を、スタスタと軽い足取りで山吹色の目にも鮮やかな道着が横切っていく。

「ちょっとあんた、どこの誰だか知らないけど帰って帰って!んもう、昼間っから酔っ払っちゃだめでしょー」

 久しぶりの再会を邪魔せんといてーとばかりに、口調的には友好的に、けれど仕草は手首のスナップをきかせてしっし、と邪険に扱いながら近寄ったのは、クリリンさんだ。ちょ、あんたお父さんを上回る氣の達人なのにその人の氣の大きさがわからんのか!?意識してないとわかんない感じなの?!
 クリリンさん戻ってーー!と内心で絶叫する私とは逆に、無防備に近づいたクリリンさんに、お父さんはひどく焦ったように怒鳴り声をあげた。

「クリリン!!近寄るなっ!!」

 だが、そんな父の制止の声も一歩遅かった。いや、一歩と言わず二歩三歩、遅かったのかもしれない。前触れはなかった。動いたのもわからなかった。ただ、乾いた破裂音のような音が聞こえたと同時に、脈絡もなくクリリンさんの体が吹き飛んで、物凄い音をたてて家の壁に突っ込んだのだ。
 ドガシャン!と、大きな音が聞こえて反射的に身を竦ませる。動物であれば全身の毛が逆立つほどに驚いた。実際、私の尾てい骨から生える尻尾は驚きにピンと伸びて茶色い毛がぶわぁあ、と逆立って膨らんでいる。
 目を丸く見開いて音のした方を見れば、頭からカメハウスの壁に突っ込んだクリリンさんの足だけが、折れてひしゃげて穴の開いた家の壁から覗いているだけで、悟飯がヒャァ、と甲高い悲鳴をあげて顔を真っ青にしてしがみついてきた。
 円らな目にみるみる内に涙が盛り上がり、今にも零れ落ちてしまいそうなほどに驚き、恐怖している悟飯に、私も顔を引き攣らせて息を呑む。全く、全然、動きが見えなかった。とりあえず音と吹き飛ぶクリリンさんの姿しか視認ができず戦闘民族超やべぇ、と背筋に戦慄が走る。う、動きが全く目に見えないとか(残像すら見えないとか)初めての体験すぎてわけがわからない・・・!
 茫然と足だけがぴくぴくと動いてかろうじて生きていることを示しているクリリンさんを硬直したまま目を逸らせずにいると、酷く驚愕したかのようなブルマさんの高い声が耳についた。

「し、しっぽ・・・?!」

 その声にはっと瞬きをこなして前を向けば、私や悟飯と同じ茶色い体毛に覆われた長い動物の尾がゆらゆらと先っぽを揺らしており、更にその先を辿れば、根本の方は男の尻へと続いていた。まるで見せつけるかのように揺れる尻尾に、誰かのごくりと喉を鳴らす音が耳に届く。それほどまでに、この場は沈黙に覆われていたことだろうか。

「僕たちと、おんなじ・・・?」

 悟飯が、涙の浮かぶ目で、しかし不思議そうに同じ猿の尾を生やす男を見つめ、首を傾げる。お互い以外に、そのような特徴を持つものがおらず(何より実の両親でさえ、尻尾は生えていないのだ)いささかの興味を覚えたようだが、それでも恐怖心が先立つのか悟飯の顔色は悪い。私は、悟飯の視界から男を隠すように頭を抱え込んでむぎゅ、と抱きしめる。ついでに尻尾も隠れるように引き寄せてみたが、恐らくはすでに男にはバレていることだろう。

「し、しっぽだ・・・!こいつにもしっぽがある・・・!」
「やっとオレの正体がわかったようだな」
「正体!?どういうことだっ」

 目を見開いて動揺を見せるお父さんに、男はにやりと満足げな笑みを浮かべて見せたが、すぐにその笑みは引っ込み不愉快そうに眉間に皺が寄った。
 男の言っていることがとんと理解できていないお父さんは、強い口調で男に詰問する。

「カカロット・・・貴様そんなことまで忘れてしまったのか・・!?なんということだっ」
「さっきから聞いてれば、カカなんとかって、オラそんなおかしな名前じゃねぇぞ!孫悟空だ!」
「名前まで忘れているだと?・・・!カカロット、貴様以前頭に強いショックを受けたことがあるか?!」
「は?」

 ちぃ、と今にも舌打ちを打たんとばかりの形相で苛立たしそうだった男が、何かに思い当たったように俄然強い語気で問いかけてきた。今までも大概話の筋が読めなかったが、更に輪をかけてわからない話題の転換に虚を突かれたようにお父さんがパチパチと瞬きをする。

「あ、頭・・・?」
「いいから答えろ!!幼い頃などに頭を強く打ったことはあるかと聞いているんだ!!」
「あ、ある。オラが覚えちゃいねぇが、うんと小せぇ頃に頭を打った。今でも傷が残ってる・・・」

 そういって頭部に触れる父には、その当時の記憶は本人が言うようにないのだろう。それでも。恐らく「痛み」というものはなんらかの形で記憶に残っているはずで、触れる指先はどこか躊躇うような動きを見せていた。しかし、サイヤ人に傷を残すとか考えてみればすげぇな。・・まぁまだ赤ん坊の頃のようだし、その頃はまだそこまで頑丈ではなかったのだろう・・・今と比べて。まぁ、赤ん坊が谷底に落ちて頭打って奇跡的回復を遂げただけで流石サイヤ人、というしかないのはわかるけど。父と男の会話に耳を傾けつつ、そんなことを考えてひたすらに沈黙を守る。いやだって声出せる雰囲気じゃないし。

「だけど、それがどうしたっていうんだ!!」

 質問の意図が掴めないお父さんは、くそ、と今度こそ舌打ちをした男に向かって逆に問いかけるが、男は・・・恐らく男にとって全くの予想外の事態に、苦い顔をするばかりで答えそうもない。そりゃまぁ、実の弟が記憶喪失でむしろほぼ別人に変わってる状態だなんて、誰も想像だにせんわな。まぁ、そうでもなければ今頃地球は終わってたんでしょうけど。
 しみじみと考えていれば、父の疑問に、今まで事の成り行きを見守っていた亀仙人さんが、何かを思い返すように、ゆっくりと口を開いた。

「その昔・・・」
「・・・じっちゃん?」
「その昔、死んだ孫悟飯・・・お主の祖父が言っておった。尾の生えた赤ん坊を拾ったが、性格が荒くどうにも懐こうとはせずほとほと困り果てていたそうじゃ・・・。だがある日、誤って谷に落ち頭を強打して死にかけたが、その赤ん坊は驚異的な回復力で一命を取り留めたという・・・。おまけにその後性格の荒さは消え、大人しい良い子になったともな」

 その赤ん坊とは、お主のことじゃ、とそう締めくくって、亀仙人さんは難しい顔で口を閉じた。一連の話を黙って聞いていたお父さんは茫然と亀仙人さんを見つめ、ついで男を振り返る。
 男はちぃ、と舌打ちを打って、不機嫌そうに腕を組んだ。

「そ、それとこれとどう関係があるっていうのよ?あ、あいつと孫くんに何か関係があるっていうわけ?」

 話を聞いていても、いまいち男との関連性が見えてこなかったのだろう。怪訝そうに、ブルマさんがそう問いかける。まぁ実際、お父さんが小さい頃凶暴で頭打ったから大人しい子になりましたーってだけじゃ、だから?で終わる内容である。男との関連性など見えては来ないが、少なくとも男の口ぶりからは、それが「原因」でとても大きな問題が起こった、ということは推察できるのだ。
 結局のところ、男の口から全てを説明されない限り、関連性など見えてくるはずもない。必然的に、男は再び注目を集めることになり、ふん、と鼻を鳴らして男はしゅるる、と音をたてて尻尾を腰に巻いた。・・・あ、そうやって収納すればいいのか。なるほど。

「何もかも忘れてしまっていたとはな・・・面倒くさい話になったものだ。いいだろう、思い出させてやる。これから貴様にも色々と働いてもらわなければならんからな」
「な、なにを・・っ!?」

 完全に自分都合でしか物を考えていない話しぶりだが、まぁサイヤ人に聞く耳なんてあんまりもってなさそうだしなぁ、と私はじっとりと男を見やった。
 幾分か状況にも慣れてきたせいか、それとも「思い出した」からか。冷静になってきた頭で、私はとっくりと男を観察する。とはいっても、見たままそれ以上何がわかるわけでもないのだけれど。ごくり、と誰とも知らず唾を呑むと、小さく、う、と小さな呻き声が聞こえてきた。

「・・大丈夫か!?クリリン!」
「あ、あぁ・・・なんとかな・・・」

 呻き声が聞こえてきた方を見やれば、壁に頭から突っ込んでいたクリリンさんが、さしたる怪我もなさそうに起き上がっていた。いや。いやいやいや。ちょ、おま、頭から壁にあの勢いで突っ込んでおいて無傷かよ!!いやそりゃ、ただ尻尾で殴打されただけだし、壁やらどこやらにめり込むことは日常茶飯事かもしれないけども、それにしたって衝撃映像だぞこれは。
 あの人も大概可笑しい耐久性だ、と恐れ戦く私を尻目に、お父さんの横に並んだクリリンさんは、ようやく警戒も露わに男を見てそっと腰を落として臨戦態勢を取った。ちょっと遅い、とも言えるが、数年の平和を考えれば多少疎くなっても仕方ないのかなぁとは思う。

「気をつけろ、悟空。あいつ普通じゃない・・・!」
「あぁ。そうみてぇだな。・・・こうやって向かい合ってるだけでも正直いって怖いぐらいだ」

 そういって、無意識にか震える手を押し隠すように、ぐっとお父さんは体の横で揺れる拳を握った。視点的によく見えるのは丁度その位置なおかげでか、いやせい、ともいうか。父の拳が血の気を失い真っ白になるほど強く握られているのが見て取れて、私も唾を呑む。こんなこと初めてだ、とひっそりと呟くようにぼやいたお父さんは、ぐっと顎を引いて男を見た。
 男は、お父さんの横に並んだクリリンさんを一瞥して、それから興味をなくしたかのようにお父さんに向き直るとぐっと腹筋に力を籠めた。

「教えてやる。まずカカロット。貴様はこの星の人間ではない!」
「!?」

 突然のカミングアウトに、お父さんたちの目が驚愕に見開かれる。悟飯に関してはいまいち意味がわかっていないようで、きょとんとしていたが、まぁいずれ理解できることなのでとりあず置いておく。私に至ってはすでに周知の事実なので、今更驚くことでもなかったので、大人しく男が続きを口にするのを待った。

「お前の生まれは惑星ベジータ。誇り高き全宇宙一の強戦士族、サイヤ人だ!!」

 肺活量も凄まじく言い切った男に、お父さんたちは言葉もなく唇を戦慄かせた。・・・まぁいきなりお前宇宙人なんだぜ☆って言われても反応に困るよね・・・。何言ってんだこいつ!?とばかりに狼狽える周囲を尻目に、男はその動揺を面白そうに笑みを浮かべて見やってから、親指をたてて、とん、と自分の胸にあてた。そして、恐らく私が一番知りたかったことを、告げる。

「そしてこのオレは、貴様の兄。ラディッツだ」

 あぁ、大根。一人、ようやく知ることができた名前に納得しながら、どうにもこうにも驚愕する周囲との温度差に、そっと視線を逸らすほかなかった私なのである。
 いやだって・・・大体全部知ってるんだもの・・・。あぁ、居た堪れない。私は溜息を零して、このなんとも言えない冷めた顔を見られまいと悟飯の頭を抱え込む腕に、ぎゅっと力をこめた。