セーラー服と日本刀



 人差し指一つ。ワンクリックで事が済む文明の利器に驚嘆を覚えて仕方ない。
 しばらく野性的な生活送ってたから文化的且つ文明的な代物に一々感動してしまうのは現代人としてどうなのか。ちなみに某大手通販サイトをもじったのかそれともそういう仕様なのか知らないが、審神者専用通販サイト、別名ネット万屋、またの名をサニゾンという名のサイトにて追加のお弁当を購入したところである。送料無料で小さいものであれば時間だけでなく場所も指定して届けてくださるとか。個人の部屋とか台所とか道場とか広間とか。どういう仕組みなのかわからないが、便利ならいいんじゃね?お弁当は台所に届けてもらうよう指定をしてほっと一息つく。
 本当なら食事は自分の手で作りたかったのだが、いかんせん最初は本丸への霊力供給だかなんだかで暗転落ちを予想していただけにこうもピンシャンしているとある意味で予定が大崩である。いいことなんだが、想定外ではあった。
 そうなると折角頼んだお弁当が勿体ない。食べ物を粗末になんてできるはずもなく(どれだけ私が飢えていたと・・・!)お料理に関しては次回に持ち越し。今回は通販オススメのお弁当で済ませてしまうことにした。あ、ついでに神棚用のお酒とお塩とお米の注文しておこう。それとサカキと・・・あれそういえばサカキは庭に生えてたような?よしサカキは自生しているのにしよう。あとのことについては、とりあえず事が終わってからだ。どうせ今日は残り二振りを顕現したら終了するらしいし。多分やろうと思えばまだある刀の顕現もできなくはないのだろうが、歌仙さん達からドクターストップならぬ付喪神ストップがかかってしまったので今回は三振りの顕現で終いにするらしい。
 いきなりたくさん付喪神を呼び出しても大変だろうとのこと。まぁ私も万全かそうでないかと問われれば万全とは言い難いことは確かだし、ただでさえまだ勝手もわからないのに人を増やしても追いつかないのは明白だ。付喪神がちゃんと日常生活送れるのかもわからんしね。細々確認しがてら慣れていかんとなぁ。

「いきなりふえてあるじさまをどくせんするじかんがへるのもいやですしね」
「そうですね。折角ですから主さんとの時間は大目に取りたいところです」

 外見的に若いの二人がにこやかに打算に塗れたことを言っているのが聞こえた気がしたが、それってそんなに大事なものなのかな?と首を傾げる。口にはしないが。大丈夫私そこまで鈍感じゃない。彼らとの温度差には気が付いているし、彼らの価値観と自分の価値観が多分結構な感じでズレてることもわかってるよ!理解はできないけれど、多分重要なんだろうぐらいの把握はできてるつもりだ。とりあえず次に顕現する同田貫と獅子王がもうちょっと冷めていると気が楽なのだが、持って歩いているだけで桜が吹雪いている現状、多分望めない。この短時間で自慢の金毛も煤けてボロボロのこんのすけの断固たる主張により、次の顕現を外ですることにしながらも(まぁ部屋があれ以上壊されるのは確かにたまった物じゃない)どんな付喪神なんだろうなぁと思いを馳せた。
 いやまぁ容姿でいえばもれなく美形なんだろうけども。姿形はともかくとして、性格的に難ありでなければいいのだが・・・いや、多分、これは、多大なる偏見だとは思うけれども。

「顔がいいのは大体どっか拗れてるよな・・・」

 そもそも人間ですらないしな。いや、むしろ人間の方が拗れてるかもしれないな・・・あ、それは私がそういうのと接触しすぎたせいですか?そうですか・・。
 遠い目をしながら庭先に降り、やや中央に進み出て背後に歌仙さん達を従える。
 二口の刀を両手で持ちながら、はて。どっちから顕現したらいいだろう?と小首を傾げた。まぁ別に順番なんで拘ることもないのだが、今か今かと期待に鍔を鳴らしている彼らの圧が半端ないといいますか。んー?

「こんのすけ、同時に顕現ってできるもの?」
「二口ぐらいならばできなくはないかと・・・」

 廊下の上で一匹だけ私たちから離れた場所でちょこんと座りこむこんのすけに、そうか、できなくはないのか、と一つ頷いた。こんのすけが明らかな避難体勢ではあるが、まぁ初っ端のあれをみたらそうなるのも頷ける。ちゃっかり妖精さんも歌仙さんたちも避難していたから(私だけは見事に避けられてたし)実質被害にあったの部屋とこんのすけだけだもんな。ちなみに破壊された部屋はむっくん達が快く直してくれるらしい。彼らには本当に足を向けて寝られないな・・・。さておき、同時顕現が可能ならば、とピンと背筋を伸ばした。

「おいでください。同田貫正国さん、獅子王さん」

 呼びかけた、その瞬間。むしろ「ど」と「し」と言った瞬間ややフライング気味な気もするが、ブシャァ!と間欠泉が吹き上げるが如く、桜が弾けた。そもそも桜が弾けるってなんぞ?という勢いで弾けた桜がそのまま勢いを殺すことなく、縦ではなく真横にトルネード方式で唸りながら私の両脇をすり抜けて背後の歌仙さん達に襲い掛かる!!と思ったら、桜トルネードをひらりと華麗に衣服を靡かせて避けた歌仙さん達のさらに背後、廊下のこんのすけを直撃した!!何故!?

「ぶほぉ?!」

 形容しがたい唸り声をあげて桜トルネードにダイレクトアタックを受けたこんのすけはそのまま部屋の障子を突き抜けて屋内へと運ばれていく。多分壁かどこかにぶつかったのかどーん!という音が聞こえて、その後はしーんと嫌に静かな静寂が辺りに落ちた。ひらひらと舞いながら落ちる花弁だけが、異様な桜の通り道の名残を残しているだけだ。
 ・・・・・・・・・・え?

「まったく、もうすこしでぼくたちにもあたるところでしたよ!」
「さすが同田貫さんと獅子王さん。見事な攻撃力です」
「鬱憤も溜まっていただろうしね。しようがないよ」

 やれやれ、とばかりに肩を竦めた歌仙さんに続けて、髪に桜の花弁をくっつけた今剣が軽く指でといて解しながら誉れ桜なだけ温情ですよ、と嘯く。堀川さんはにこにこと笑いながら、あの障子も換え時ですねぇ、なんて言っていて、いや換え時っていうか、強制じゃね・・・?と内心で突っ込みながらも私は平然としている彼らに恐れおののいた。
 君らは一体こんのすけに何の恨みが・・・?ていうか顕現する度にあの桜は物理的な攻撃力を伴うんです・・・?え、なにそれ日本の心の桜にちょっとトラウマ植えつけられそうなんですけど。むしろ今後顕現するの怖いな。それ私には向かないよね・・・?とこの先に一抹の不安を覚えていると、突然に背後からがばぁ!と衝撃が私を襲った。ホワッツ!?

「主!主主主主!!会いたかった・・・・!」
「ど、え、は、おぉ!?」
「怪我は?!体調は!?傷は?!大丈夫なのか!??」

 すっぽりと抱きしめられながら、矢継ぎ早に問いかけられて目を白黒させる。後頭部に何かもふぅ、とすごい柔らかなものを感じつつ、背中だから誰か確認できない・・・!ともがいていると、がつん、と固い痛そうな音が響いてびくっと肩を跳ねさせる。今度は何!?

「いっってぇ・・・!」
「馬鹿かお前は。それじゃなんもわからねぇだろうが」

 腕が離れて密着していた誰かから解放されたところで慌てて後ろを振り返れば、そこには頭を抱えてしゃがみこむ金髪に黒い大きな毛皮を背負ったにーちゃんと、その後ろで呆れた顔で三白眼を半目にしている顔面に大きな斜め傷をこさえたガタイのいいにーちゃんが!お兄さんっていうより雰囲気がにーちゃんって感じな二人組だ。
 どちらも衣服は黒いが、衣裳のタイプは割と真逆である。強面系の三白眼なにーちゃんの方は黒い着物に部分武装。胸元にかけての鋼の黒光りが威圧感を放ち、黒い襟巻をして、小脇に異常な存在感を放つ赤い兜を抱えている。
 金髪に黒い毛皮を背負ったにーちゃんは、隣のガタイのいい彼に比べると大分手足がほっそりとしていて、小柄に見える。衣服も手足の長さを見せるようにぴったりとラインを強調し、長いコートを地面に広げて着物とは真逆の洋風のイメージだ。
 ・・・強面の方がガテン系なら、こっちは地元のヤンキーだろうか。かといって悪ぶったわけでもなく、ちょっとやんちゃな、という形容詞がつく程度の青年である。
 私はポカンと口を開けて呆けながら、佇む二人を見つめてやや止まりかけだった思考を回す。えぇと、流れ的に言えば。

「同田貫さんと、獅子王さん・・・?」

 だよね?むしろそれ以外に存在したら軽くホラーだよね?戸惑いつつ声をかければ、頭を抱えて痛みに唸っていた金髪のにーちゃんが、がばぁ!と勢いよく顔をあげた。
 片目を前髪で隠し、見える側の少し猫目がちな灰色の瞳に浮かんだ涙は痛み故だろうか。ふわふわと癖づいた髪を襟足でシュシュでまとめたいささか少年染みた顔立ちの青年は、灰色の猫目をこれでもかと見開いて、パァァ!と表情を明るくさせた。

「・・・もっかい!」
「はい?」
「もう一回!呼んでくれよ、主!」
「え?」

 上目使いに見上げながら、ねだるように青年は頬を紅潮させる。
 呼んでくれって、名前を?・・・いや、でも、どっちがどっち?人型時の刀の姿など知らないので、ぶっちゃけ名乗られていない現状、どっちがどっちなのかは私には判別がつかない。どっちが狸でどっちが獅子なの?戸惑いがちに刀を見ればわかるかな、と視線を彼らの腰元にやると、僅かに溜息が聞こえてばーか、と呆れた低い声が再び響いた。

「名も名乗ってないのにこいつがわかるわけないだろ。先に名乗りだ」
「あ、そっか。同時だったもんな」

 そういって、顔に傷のある・・・兜を小脇に抱えていらっしゃる、襟巻を巻いた、さらしの上からでもわかるシックスパックを襟から覗かせたにーちゃんは三白眼をきろり、と動かしてずいっと一歩こちらに踏み出した。
 その際、彼は視線をさっと私の全身に走らせたかと思うと、襟巻で口元を隠しながらほっと息を吐いたような気配がした。少しだけ細くなった目が安堵を浮かべたのは気のせいだろうか。
 そういえば彼らの頭上からは変わらず桜がひらひらひらひら舞い落ちているのだが、強面にーちゃんも実は内心喜んでいるのか?眉間に皺が寄っていて一見不機嫌そうにも見えるけれど、表情だけではよくわからない。ただ今剣曰く桜は刀剣男士の歓びの現れらしいので、多分喜んでいるのだと思う。喜びの証がものすごい物理的攻撃力を伴っているのはこの際考えないことにして。

「俺は、同田貫正国。武器は強ければいい・・・質実剛健ってやつだな」
「俺の名は獅子王!黒漆太刀拵も恰好いいだろ?また一杯使ってくれよな、主!」

 ふっと口角を持ち上げて笑うのは顔に傷のあるにーちゃん・・・同田貫さんと、ニカ!と眩しく笑うのは金髪のにーちゃん・・・獅子王さん。
 桜を吹雪かせながら、私はなるほど、と一つ頷いた。・・・言われてみれば、なんとなく刀の印象そのままな気はする。飾り気のない、まさに武器らしい武器であった同田貫に、太刀であるのに細く軽く作られていた獅子王。刀のイメージをそっくりそのまま反映させたかのような、「らしい」といえばらしい姿形を彼らはしている。二人ともタイプは違うし、同田貫さんなんか一見そうとはわかり辛いかもしれないが、間違いなくイケメンだ。雰囲気イケメンというものがあるように、その人が纏う空気で印象というものはガラリと変わるので、普通に顔だけみてみればそこらの人間など及びもしない整ったそれなのは明白である。そもそも歌仙さんも今剣も堀川さんもそうだが、人間として顔立ちが有りえないことに、シンメトリーを描いているのだ。つまりズレがない。左右のバランスが取れていると、それだけで人間って「綺麗」だと感じるんだよね。あと人間の顔って絶対どこか歪みが生じるから「左右対称」って有りえないのだ。その有りえないを実践しているのが付喪神の顔面である。人外が綺麗なのは、生き物として絶対にありえない顔の構造しているからなんだろうなぁ。
 なんて、顔面の考察はさておいて。私は名乗ってくれた二人に改めて背筋を伸ばして向き合うと、視線を二人にひたっと合わせてゆっくりと口を開いた。 

「初めまして、同田貫正国さん。獅子王さん。長いことお待たせして申し訳ありませんでした」

 刀のまま顕現されなかった彼らはずっと待っていたという。無論わざとなわけではないのだが、大分もどかしい思いをしていたそうなので、詫びの言葉を口にしながら軽く頭を下げると、獅子王さんは全くだぜ!と少しわざとらしく唇を尖らせた。

「でもま、主のせいじゃないのはわかってるからな。こーして顕現できたし、これからは俺が主の代わりに敵をぶった切るから安心してくれよ!」

 だから、もう二度と無理をしてくれるな、と少しばかり泣きそうに眉根を下げた獅子王さんは、黒い巨大な毛皮・・・いやあれ毛皮っていうか、毛皮だけど、うん??毛皮にもふっと片手を埋めて、鵺も心配してたんだぜ?と言った。鵺?・・・鵺!?

「え、あ、ぬ、鵺っ?」
「おう。あ、鵺っていっても別に襲ったりなんかしないからな。こいつは逸話にちなんだ一部みたいなもんだし」

 もふ、もふ。すごい触り心地がよさそうな毛皮(よくよく見れば狒々みたいな顔がついてらっしゃる!)を触りながら、そう説明する獅子王さんにへ、へぇ、と動揺を浮かべながら返事をする。・・・鵺っていうと、個人的経歴から見たことは無いけどあの鵺を思い出すなぁ、なんて思っていると、名乗った後は黙っていた同田貫さんがものも言わずに腰の刀を抜き取ると、無言で突き出してきた。・・・なんぞ?パチパチ、と瞬きをして、同田貫さん(人型)と刀(本体)を見比べる。獅子王さんはすい、と目を細めて、私は差し出された刀に当惑の眼差しを向けた。その私の視線をどう受け取ったのか、彼はぶっきらぼうに口を開いた。

「俺は刀だ。闘うことが本分だ。闘えりゃそれでいいし、戦に出してくれりゃ文句はねぇ」
「はぁ・・・」
「元は手足もなにもねぇただの武器だ。だからあんたが使ったのは間違いじゃねぇし、それが正しい在り方ってもんだ。正直言えば、人の手で振るわれて敵を斬るに越したことはないと思ってる」
「そう、ですね・・・?」

 まぁ元々道具だもんな。この状態は本来あるべき姿ではなく、人がその手で振るうのが正しい姿だ。彼の言い分は最もで、同意をしながら何が言いたいのだろう、と首を傾げた。人型になりたくなかったってこと?あれ?でも刀剣男士ってそれを了承したからこうなるんじゃないの?え?もしかして私拒否られてる?ぐるぐると考えていると、同田貫さんは一つ息を吐き、ぐっと目に力を込めた。元々鋭い目が、より一層鋭さを増してぞくぞくと背筋に悪寒が走る。気迫とも言うべきか。その力強い琥珀の瞳に魅入られたように視線を逸らせずにいると、彼は薄い唇をゆっくりと震わせた。

「けどな、あんたにゃ俺は似合わねぇ」

 ひゅっと息を呑んだ。似合わないと言われて、それが彼の意思なのかと思って。あれ、これは契約解除の流れか?!と拳を握ると、彼は私に差し出した刀を自分の元に引き戻し、改めて腰に差しこんだ。そうしてぽん、と柄頭を叩いてしっかりと握りこむ。

「――ボロボロで血反吐吐いて戦場でぶっ倒れるのは、あんたじゃなくて俺の方が似合いだ。敵を斬るのも斬られるのも、あんたじゃなくて俺だ。――戦場には俺が出る。だからあんたは、ここでしっかり、生きて待ってりゃそれでいい」

 まぁ、あんたに使われるのは悪くないけどな、とそう最後に言って、同田貫さんの口角が僅かに持ちあがる。その微笑みを見上げながら、私は言われたことを理解しようと頭を回転させて・・・獅子王さんの、ずるい!という声に思考が断ち切られた。

「なんだそれ!同田貫何一人でかっこつけてんだよ!」
「別にかっこつけてなんかねぇよ」
「いーや。かっこつけてるね!あぁ、くっそ。出遅れたなー」

 そういって、獅子王さんは頭をがしがしと掻くと、くるりと私に向き直り猫目を細めて、そっと私の手を取った。それをポカンと見やりつつ、彼の灰色の片目を仰ぎ見る。

「さっきも言ったけどさ・・・主の敵は俺がぶった切る。そりゃもちろん、同田貫が言ったみたいに、主の手で振るわれたらすげぇ嬉しいよ。俺たちは道具だからさ、それが一番幸せなんだ。でも、俺は、あんたが傷ついて、ボロボロになって、死にそうな目に合うところなんて、もう見たくない」
「獅子王さん」

 掠れた声で呼ぶと、彼は猫のように目を細めて嬉しそうに笑って、それ、と呟いた。

「ずっとそれを待ってた。名前を呼んで、視線があって、こうして触れあえたらって。刀であったときじゃできなかった。こうして肉体をもって、初めてそれができた。――使われるだけじゃない。使う身体を得たんだ。主を、自分自身の手で守れるんだ。これ以上の誉れはないだろ?」

 だから、なぁ。

「俺を使ってくれよ、主。もう何にも、あんたを傷つけさせたりしないからさ」

 そういって、大事なものを手放さないかのように。握りしめられた手が痛いくらいで、私は獅子王さんの泣きそうな、痛みを堪えるような微笑みを見つめてあぁ、と小さな吐息を零した。―――彼らは。
 息を吸う。一瞬目を閉じて、すぐに開くと正面に二つの顔。じっと見つめる目は次の言葉を待っているようで、私はそっと獅子王さんの手を外すと、胸に押し当てた。
 とくとくと動く心臓を。多分、何より尊んでいるのはそれを刺し貫くことができる、彼らなのだと。思えば、言う言葉は一つだけ。


「私と一緒に、生きて、戦ってください」


 私の代わりに。戦場で。生死の狭間で。その身を振るって。
 彼らは堀川さんへの問いかけを聞いていたのだろう。聞いて尚。それすら無用なのだと、そう思っている。願いは命令。祈りは切望。彼らはずっと、望んでいた。だってほら、そう言ったあとの、彼らはとても。

「当然だ」
「あったりまえだろ!」

 とても嬉しそうに、笑うのだ。吹雪く桜が、晴れ空の下で、酷く鮮やかに舞っていた。